レミ街 2015/7/20 Tokuzo,Nagoya LIVE REVIEW

雑誌MUSICA2015年8月号のインタビューで、サカナクションの山口一郎が

「アンディー・ウォーホールのファクトリーみたいな、いろんな人達が複合的に集まって、自然にこの人のMV撮ろうよとか、アー写今度やってあげるよとか、そういった現象が起きるような空間がちゃんと認められていくようにしないと、新しい未来の音楽に嫉妬できない 」

と語っているが


去る2015年7月20日、海の日に名古屋でおこなわれた4階建ての美容院をフルに使った音楽イベント『 (N)ICI MUSIC DAY!!』(ナイスミュージックデイ)はまさにそんなイベントだった。



ライヴに加えてDJ、飲食店の出店、レコード屋、実演販売、カメラマンらが集まる。ちなみに美容院のスタイリストが演奏者の髪をセットする。

LOSTAGE五味岳久が演奏中、「美容院でイベントなんてすごい」とため息をつけば。

レミ街からコーラス参加の深谷彩が「他ではないと思います!」と返す。


五味は、また名古屋に来たら一緒に歌ってほしいと深谷に。

「ふだん感情を表に出さないけど、今日は楽しい」と笑顔で。

さらに「彼女のことをぐいぐい姉さんって呼んでるんです。どんどん話しかけてくれて、でも土足じゃない。フィーリングが合うのかも」とも。

フィーリングが合う者同士が集まって、そんなに大規模じゃなくても、これはサカナクション山口が言っていたコラボレーションの空間そのものじゃないか。




深谷はその足で御器所から今池tokuzoに
夜はレミ街とLlamaのダブル・リリース・パーティー。双方、大所帯のチェンバー・ポップ・ユニット。



LLamaは幾何学的かつエモーショナルなポスト・ロックと清涼で透明感あるフォークが溶け合った独自の音楽を追求する京都のバンドだ。




レミ街も、ベース角谷翔平の病欠にもかかわらず見事なステージ。フィドル、チェロ、フルート、サックスを含む大所帯の強み、加えて数曲でLLamaのベース藤井都督のサポートも得てステージをこなしていく。リーダーの荒木正比呂が言っていた通り、「友達だから無理を頼める」


アンコールでは両バンドのメンバーがあふれんばかりステージに上がって合体ユニットLLama街で2曲披露。LLama吉岡哲志の声はレミ街のサウンドによく合う。要するに両バンドに通底する世界観があるのかもしれない。 

レミ街は今年4月に名古屋市を巻き込んで公共ホールでのコンサートを行ったばかり、その時ステージで歌っていた中学生の男の子たちも観に来ていて、その夜もアンコール時にステージに挙げられていた。

年齢も環境も違っても、音楽という共通軸によって集まり、結び付く。


大人の都合で作られた流行とかシーンとは無縁の、それぞれの人柄や趣味嗜好、日々の生活や偶然に基づくつながりだ。それはゆるくあいまいなようで、けっこう丈夫。しっかりした糸で編まれた衣服のようにさりげなくそこに在る。

サクナクションの山口もこの光景をもし観たらうらやましがったかもしれない。そういえばレミ街とサカナクションはフィッシュマンズからの影響を感じさせるフォークトロニカという意味では近いユニットだ。

それはともかく、様々なアート、そして音楽が生活とともにある、1つの理想を体感した1日だった。