tigerMos REVIEW

 シーンの主流からはみ出しているからこそ生まれるトリックやミラクルがある。名古屋のインディー・シーンでも《THISIS(NOT)MAGAZINE》の周辺に、そういった異端かつ奇異なミュージシャンが集まっている。6eyes(シックスアイズ)やMILK(ミルク)のようなポスト・パンク/ハード・コア系のバンドから、ジョンのサンやYOK.(ヨック)のような叙情的アーティストまで様々だが、最近注目されているtigerMos(タイガーモス)は特に変わったユニットだ。アメリカ帰りのSSWイケダユウスケが、レミ街のキーボード/トラック・メイカーの荒木正比呂を誘って結成し、幻想的なフォーク、サイケデリア、エレクトロニカを折衷したサウンドをバックに、優しく滋味深いファルセットで歌い上げる。

COOKIE SCENE REVIEWジョセフ・アルフ・ポルカ「天声人語」より)

より大地に根ざしたAriel Pinkというか、名古屋のRadioheadというか、こういった比喩は凡庸で、往々にして正確ではないのだけど、そう例えさせてください。tigerMos(タイガーモス)のライヴ観てきました。彼らは来年2015年、ついにアルバムをリリースするとか。



2014年12月14日鶴舞K.Djapon。編成はアコギと歌の池田ユウスケさん、キーボード、ピアノ、マラカス等の荒木正比呂さんに加えサポートでギター、ベース、ドラムス、パーカッション、はるか異国の民族音楽を思わせる、でも名古屋でしか生まれえなかったフォーク・ミュージック。その一方でどっしりしたリズム隊は遥かアメリカの広大な大地を思わせる。

スタイリッシュな演奏に透き通るようでいなたい、ときに咆哮のような池田の歌声が乗る。 浮遊感あるファルセットの英詩ヴォーカル。踊るように、鳥がさえずるように舞う。時に上ずる声。何かが憑依しているかのよう。そして昇り来る朝日のようなギター。北欧の風を感じさせるキーボードが歌を支える。

ファルセットを多用する歌の切れ味はワイルド・ビースツを連想させる。谷に住んでいる狐の鳴き声のよう。獣のように悶える肢体、声。丘の上の揺りかごのようにどっしりと揺れるリズム 鍵盤ハーモニカが子守唄のようなメロディーを添え、マラカスは子どもをあやすよう。tigerMosは『狼の子どもが乗った揺りかご』だ。ハスキーかつ少年のような声で、時折目をつぶり何が見えているのか。観る者を遥か過去への郷愁へ誘う。

 余計な音を出さない スキマに在るものを大切にしている。ある日のライヴ、静かなフォーク調の曲で子供の声が演奏に重なるのはハポンならではでした。