ちくさ座『うずうず』でのバイセーシ LIVE REVIEW

2014年12月21日ちくさ座『うずうず』行ってきました。


80年代風ディスコ・トラックとラップ調の語りで市井の人々のリアルを切り取るクリトリック・リスことスギムさん。あたかも様々な人生をDJミックスするかのように彼が叫び、歌い上げた後、次にステージに現れたのは、大阪の4人組バイセーシ。(ki-ft review バイセーシ: 龍 )

グランジ、オルタナティヴ、ハード・ロックを軸に様々な要素が混じりこんだ彼らの演奏は音楽性は違えどクリトリック・リスと共通するものがありました。切実に胸に迫る、場の空気を変える力。時に笑い泣きしてしまうような侘しさ、あたたかさ。リスさんが現代の演歌、日本のヒップホップなら、バイセーシはURC全盛期の叙情フォーク。そんな唄心が感じられるのです。

「明るくしてくれませんか? 照明をではなく、この僕を! 久しぶりにひとに会ったとき… 元気にさせてあげられるような人間になりたい。乾電池のような」。そう語るのはヴォーカルの病気マサノリ。倍音がかっただみ声は同時にやさしく繊細にすら聴こえる。


ステージから飛び出してはさんざん客と絡む彼、客に手をつながせて輪を作りその中心で歌う、その姿からは高圧的な感じや押しつけがましさは感じられない。うつむきながらおずおずと、ときに申し訳なさそうでさえある。激しい歌唱とギャップがあるようで不思議と違和感なく連続している。年齢も住む場所もこれまでの境遇もそれぞれ異なる誰かと誰かが、わずかな時間でも仲良くすごせるとしたら、それ自体が僥倖であることを、きっと彼は知っているのだ。

「ライブ観に来るだけじゃなく家でテレビも観てね」と語って最後にハード・ロック・ナンバーを演奏する彼らから、私が感じたのは、孤独であることの安堵感と寂しさ。そして多くの人と関わることによる緊張と感動でした。


全く関係ないが、開演前にバンドマンらしき男性二人が「イベントをやりたいよね」。「なんていうか、何処かに属さないと生きていけない…… 例えばニートとか、社会のシステムからはぐれた人が集まれるような」という内容を話し合っていたのを、この文章をまとめていて、今、ふっと思い出しました。


また、同イベントには他に、非常階段、後藤まりこバンド、GEZAN(下山)など様々なバンドが出演、千種文化小劇場の2ステージをカオティックに彩っていました。



by 森豊和