岩崎だもみ/スティーブジャクソン LIVE REVIEW



岩崎だもみ(Damomi Iwasaki)さんというシンガー・ソングライターを観ました。

鶴舞ハポンのブッキング・スタッフでもある、スティーブジャクソンのモモジさんが

「音楽続けてください。いやな気分にならない痛さというか、その声、好きなんだよね。」

と仰っていましたが、もう、それがすべてだと思いました。


それは彼女のMC、「最後の曲になります。もう二度と逢えないかも知れないですけど。本当に心こもってます。今のは。」を受けてのライブ冒頭の発言なんだけど。


あ、鶴舞ハポンのイベント、『未知との遭遇』でのことです。

声がいいし、ギターの音色も、同じなんです。
双方とも主張してる。大森靖子の弾き語りとか、初期はこんな風だったんじゃないかとか。

絶望を語っているけど、だから「なんとかしてください」とか、「なんで私ばかりとか」、そういう愚痴の響きじゃない。達観とも少し違う。むしろ彼女は絶えずオロオロしてる。

でもふしぎなのは、その動揺は、全体として一つのフォームになっていること。オロオロしたままで、でも独りでなんとかしようとしている。勝手に自己完結しているわけでもなく、なんていうのかな。


たとえが正しいかわからない。

お祭りの夜店で、綿菓子とか焼きそばとか、流行りのジャンクフードじゃなくて。
身体にいいお惣菜とかおせんべいとか並べていて、素朴においしいんだけど。
当然、目立ったり華やかだったりしないからそこそこしか売れずに
申し訳ないからと早目に店をたたんでしまう売り子。そんな感じ。
でも、とても大切なものを提供している。

この世界は、実はからっぽなんです。
そんなことを歌っても誰も振り向かない。いや、知りたくないから振り向きたくない。
だから、非常にしばしば、まっとうな音楽は、ただ黙ってうつむいているしかない。




そしてスティーブジャクソン(Steve Jackson)。モモジさん率いる和製AORユニット。

ただ必要な音がそこで鳴っている。

あるときは生演奏による80年代の密室エレクトロ・ファンク。
スライプリンスみたいだとけっこう本気で思う。

と思えば、70年代の野外サイケデリック・ロック。
空間に音が適切に自由に広がっていく。


そういえば笑ってしまったのが、「ミルクと牛乳」という脱力ファンク・チューンで
ギター・リフのアレンジがサザエさんのテーマと酷似していたこと。
筒美京平は和モノ・ファンクらしいけど、スティーブジャクソンはいったいなんだろう。

定義やジャンルわけはよく知らないけど、ただ、素晴らしい音楽。私はそれでいい。