レミ街"THE DANCE WE DO 2015"LIVE REVIEW

 

四季の変化を表すVJと共に、照明で様々に表情を変える、造形作家、高橋政行による植物をモチーフにした巨大オブジェが舞台の中心に据えられている。今夜の中村文化小劇場は満員御礼。名古屋のチェンバー・ポップ・ユニット、レミ街のヴォーカル深谷彩に従うのは、勇壮な中学生9人のコーラス隊と、花開くようにステージを飛び交う『ダンススタジオ『AMS(アムス)』』のダンサー8人。『人形劇団パン』が主催し、ミュージカルとして見事に統制されている。


photo by miuraccamera


その演技との相乗効果か、安定したリズム隊に乗る、キーボードの印象的なフレーズ、ギターの特徴的なリフの繰り返しが巡りゆく四季を連想させる。さらにサックス、フルートに、フィドル、チェロが要所要所で重なり合い、暖かな春の日差し、激しい夏の雷雨、うららかな秋から厳しい冬の到来といったイメージを添える。様々な災害、困難をへて、異なる音色の楽器たち(動物たち)が共存する物語を彼らは演じている。「都会から自然へ還る」。洗練されたシティー・ポップ/クラブ・ミュージックを、オーケストラ編成でトライバルなビートへ移行させていく。2010年代の地方都市を生きる私たちの視点で、この星の自然、巡りゆく季節、悠久の時を俯瞰する。

 
  地元でフェス、イベントへの出演を積み重ね、名古屋だけでなく、関西のインディー・バンドとも交流し、LOSTAGE五味岳久によるレミ街全員の似顔絵といった副産物も得られた。バンドの評価を高めるとともに地元企業とのつながりを深め、舞台衣装、ヘア・メイク等の協力を得る。別プロジェクトtigerMosで作曲したCMソングを『人形劇団パン』団長に気に入られたのがきっかけで公共施設での企画につながった。さらに名古屋市の協力を得て地元中学生コーラスも公募。今回のレミ街の試みは、後続の野心的なインディー・ミュージシャンにとって一つの指標となるはずだし、芸能が本来あるべき姿をも示唆している。神話の時代、四季の祭事において、歌と踊りと造形物、そして照明、つまり“火”は欠かせないものだったのだから。

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